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ジャンゴ

なぜか本棚に「ジャンゴ」花村萬月著があった。花村萬月という作家は知らない。はっきりとは分からないが、多分、古本屋で乱雑に置かれた安売りのものをなんとなく買ってきたのだと思われる。古本屋があるとついつい寄って、ついワゴンの本を数冊買ってしまうという悪癖がある。積み重ねた人生をかけて、すざまじい下調べをかけて書かれた本がたったの100円で買えてしまうなんて!いつもながら小さな驚きを持って、ついつい食指動いてしまうのだ。銀硬貨1枚に匹敵するペーパーブックの軽さは、ことによっては重い軽さだ。


話はそれるが、「存在の耐えられない軽さ」という5本指に入る愛読書がある。「軽さは素晴らしく、重さは本当に恐ろしいことなのか・・・、」ニーチェを引用した導入に導かれてページを紐解いていくと、相反する精神世界がコインの裏表みたいパラパラ見える。哲学なのか、それともただの感慨なのか・・・アイロニックで、随分と哀しい香りがする小説だ。


「存在の耐えられない軽さ」については、他で語るとして、今日はその「ジャンゴ」について。なぜこれが安売りワゴンの中から選ばれたかについて・・・。きっとそれは花村萬月という字が花と月を持っていたからだと思われる。日本人なら雪月花・・・そして萬の字、ちょっとおどけたようなファルス感。そしてブックカバーの表紙はギターの弦。雪月花におどけた感じ・・そして音楽。これなら好みの三拍子が全部揃っている。


「ジャンゴ」はジャンゴ・ラインハルトのジャンゴ。ジプシー育ちのギタリストでキャラバンが火災にあったとき、左手の小指と薬指が全く動かなくなってしまった。ジャンゴは人々の前から姿を消し、残った指で独自奏法を編み出し、天才ギタリストとして完全復帰を成し遂げた。


ところで、東京のクラブでプロジャズギタリストとして演奏している沢村という男がいた。その沢村が山城という大手芸能社プロ社長の持つ赤坂の超高級クラブで演奏していた時だった。山城の妹である美女、麗子に甘く口説かれた沢村は、思わず麗子と一夜の関係を持ってしまう。その時、麗子は沢村の尻にスピードを挿入し、その味を教えた。


山城のプロダクションは、所属タレントをスピード漬けにして、絶対服従させるという残酷な方法を使っていたが、妹がスピードに手を出していることを知り激怒。スピードを教えたのは沢村だと勘違いし沢村を呼び出した。そして、麗子に口ぞえされ、沢村を彼の尊敬するジャンゴのごとくするため、銃で指を吹っ飛ばし、その上、巨大なオカマの男にレイプさせた。尊厳をずたずたにされた沢村は、復讐のことを考えはじめるのだが、それこそ麗子が望んでいたことだった・・・


設定が若干突飛で、感情や流れの飛び方があんまり気持ちよくないけれども、文章は音やリズムの匂いがする。官能というよりは、少しえぐい感じのする花弁のようなものを、こねくり回して、覗き込む、刻み続ける、踊り続けるみたいな情欲世界だ。鬱屈、嫉妬、卑屈、悔恨、憧れ、挫折、恐怖、スピード感みたいな感情がリズム体でスイングして打ち続ける。この本を読むと、なぜ「ジャンゴ」なのか、それが分かる。










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