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午後の曳航


三島由紀夫が一等好きだ。ほの暗い闇からなまめいた赤色が挿すようなその気だるく、逞しい憂愁。死と恍惚・・・

良人に死別された未亡人、房子は港近くで一級の舶来洋品を扱うオーナーであり、登という息子がいる。港に船が寄港した際、房子は兼ねてから船を見学したいとねだっていた息子の登を連れて船内の案内を乞う。その時、船を案内した男が塚崎竜二であった。

そんなある日、登は自室の箪笥の奥から光が差し込んでいるのに気付き、そこから母の部屋に通じる覗き穴を発見する。そして登は覗き穴から母と塚崎の情事を垣間見てしまう。

登は普段学校で首領という大人びた少年を筆頭とする優秀なチームを組んでいた。その少年たちは定期的に大人達に関する審議を開き、審判や判決をくだす。また「感情のない訓練」をしたり、実験的に動物を殺しそこから得られる感慨を味わったりする実験に興じている。さて、登は海に対する寛容と憧れから塚崎に敬意を評し、仲間に自慢したいと感じていたのであるが。しかし、仲間と一緒に登に対し、塚崎は母との一件にたいする後ろ暗さから登に媚びた笑顔を浮かべる。

塚崎に出航の日は近づき、彼は再び航海に出る。冬なり再び寄航した塚崎は母の元に戻り、ついにこのまま母と共に暮らすことを決意する。一方で登は輝かしい港のマドロスであった竜二が品のいいセェターを着た父親になって堕落していく様に許しがたい罪科を感じる。

その頃、登と首領を筆頭とする少年達は世界の虚無を埋めるために、死という購いが必要だと考えていた。ある日、登は件の引き出しから母の情事を覗いていたのであるが、それが見つかり、父になった塚崎に諭される。登はその塚崎の父親然とした醜い態度に許しがたい侮辱を感じ、首領に告発する。そうして少年達の虚無を埋めるための、死の必然性・・・・死刑執行の必要性はかつて光り輝いていたが今は堕落してしまった男、塚崎竜二にあてられたのだった。

―灼けるような憂愁と倦怠に沸き立ち、剥鷹と鸚鵡にあふれ、そしてどこにも椰子!帝王椰子。孔雀椰子。死が海の輝きの中から、入道雲のようにひろがり押し寄せてきていた。彼はもはや自分にとって永久に機会の失われた、荘厳な、万人の目の前の、壮麗無比な死を恍惚として夢見た。世界がそもそも、このような光輝にあふれた死のために準備されていたものならば、世界は同時に、そのために滅んでもふしぎはない。

血のように生あたたかい環礁のなかの湖。真鍮の喇叭の響きのように鳴り渡る熱帯の太陽。五色の海。鮫・・・

竜二はもう少しのところで後悔しそうになっていた

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