刺繍草紙

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騙す

「花の病氣」という名前で「傷」という作品をやったことがある。先日、オーディションをやったとき、「傷」を観てくれた人がいてとても嬉しかった。「傷」というものを「軽蔑」と同じ頻度でよく考える。軽蔑と傷は表裏のものとして考えているかもしれない。人は傷つかぬために軽蔑するのかもしれない。というより、傷ついたから軽蔑するのかもしれない。

石よ、樹よ、水よ、僕よりも誰も傷つけぬものたちよ
というのは中島みゆきの歌だけれど・・自分が傷つけられた時もさることながら、自分が傷つけているときづいた時も大変嫌な気持ちのするものだ。愛するがゆえに傷つけるみたいな微妙なニュアンスのものは放置するとしても、一般的に傷と無縁で生きるのは難しい。

ところでつまらないことだが、二人だけでいるのに隣で携帯を触る人に傷つく。知り合いと電車で隣り合わせや向かい合わせに座っていたりする時、そのことを断わるでもなくスマホを触り続けられる神経に徐々にやられる。傷つきたくはないので、その瞬間軽蔑するように努力する。仲の良い人だったら注意すべきかどうか迷う。私だけだろうか。ユーモアに富んだ会話をする人はそんなことは無縁だろう。そんなに仲良くなくても、喋ることがなくても二人しかいなければ携帯に夢中にならないことはマナーだと思うが、スマホの指を動かす手がずっと止まらない人を見ると、目上だろうが、目下だろうが、友達だろうがすごく寂しい気持ちになる、いきなり床に落とし穴ができてスーと沈んでいってしまいそうな気持ち。「気まずいのだろうか」とか「私としゃべるより携帯を触る方が彼(彼女)にとって精算的な行為なんだろうな」「せめて離れて座ってくれればいいのに」とか色々考える。

まぁ、でも仕方がない。生きるということは傷つくことで、傷つけるということだ。私も手裏剣をザクザク飛ばしながら生きているのだから他人がどのようにしてようとたいして責められた筋合いでもないし、今の世の中、「精神的に弱すぎる方が罪」である。勝手に傷つく被害妄想過多な奴ほど周りが見えていないものだとも思い、反省する。

というわけで、私は長く「傷」にまつわる「偽物」「偽善」「無言の暴力」「騙す親切」とかそういうことを書きたいと思っていたが、なぜか「マジック(奇術)」について書くことになった。マジックは確かに人を欺くけれど、それが詐欺と違うのは傷が全く含まれていないことだ。そこには喜びとか茶目っ気とか神秘と驚きが含まれている。私は今、マジックのことを知るごとにあたたかい気持ちになっている。それがまた自分とは遠い世界のことのようにも思えるが、私は周りにいる人を楽しくさせるようなタイプの人間ではないけれども、マジックというものを描くことで周囲にあたたかなものを届けられるかもしれないと考えたら嬉しい



劇団レトルト内閣 第二十二回本公演
「酔筆 奇術偏狂記」

2014年8月29日(金)~31日(日) HEP HALL

消えたコインと破いたお札、
サインの描かれたトランプカード。
夫が求めた手品の世界と、妻が磨いた小さなちゃぶ台。
男と女、背中合わせのロマンティシズムに種も仕掛けもありません。

脚本・演出の三名刺繍が、
自らの祖父であるマジシャン・金沢天耕(1909-1995)をモデルに書き下ろす最新作。
明治・大正・昭和の激動ニッポンを駆け抜け、歴史に名を残したマジシャンたちの数奇な運命をエレガンスロックにのせて描きだす、ヒストリカル・マジック戯曲!!

【脚本/演出/音楽】
三名刺繍

【出演】
福田恵 / 川内信弥 / よしもとともしよ / こみたお / 佐伯雄司 / 山崎友梨 / Q本かよ
井之上チャル(テノヒラサイズ) / 向田倫子(ババロワーズ) / UME2
平本茜子(よしもとクリエイティブ・エージェンシー) / 佐々木ヤス子 / 白石幸雄
魅優 / 田中尚樹(劇団そとばこまち) / 片岡結衣 / 小阪慶 / シュウスケ / たはらもえ

特設サイト / 2014年6月中旬公開
チケット発売 / 2014年7月5日(土)

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