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マシュー・バーニー 拘束ドローイング


アメリカの鬼才現代アーティスト、マシューバーニーの描く衝撃の映像作品。「拘束ドローイング9」

(ストーリー)
液体を染みだした化石のようなものを白い和紙で包装し、赤と金の熨斗をつけ繊細な贈与物が出来上がる。捕鯨船上ではクレーンで巨大な鋳型が組み立てられ、液体が流し込まれてゆく。奇妙な阿波踊りの一段が海へと向かっている。一組の男と女の客人あり、(マシュー自身とプライベートのパートナーでもあるビョーク)男は剃刀で女は湯船でその身を清める。女は介添え人により髪を大きく結われ、貝の簪を挿し、男も女も水に濡れた襦袢を纏い、毛皮や貝殻など身に着けやがて日本の婚礼装束になる。男と女は立つ事も出来ぬ窮屈な廊下に小さく腰掛け、船上にしつらえられた茶室の扉をあけ、作法にのっとり主を待つ。やがて主はやってきて、巻貝で出来た真っ白な茶碗に、湯を流し込み、貝の茶筅を置き、練りこめられた草色の茶をたてる。それを飲み干す二人。その時、主はこの捕鯨船「日新丸」について低く語る。一方では凝固してゆく鯨の液体が船中に微香を発する。それらの凝固物質は四角に遺伝子や恐竜の背骨を髣髴させるような円形の羅列に分断され運ばれてゆく。凝固物は変容し溶解してゆく。船は水に浸され、客人の男と女は互いに絡み合いながら捕鯨用のナイフで互いの身体を刻みだす。刻まれてゆく肉体と、筋を描いて水を上ってゆく血液、切り取られて浮かび上がる皮膚。身体は儀式的に刻まれ、船上の物質は巨大な瓦解を内包しながらもゆるやかに崩れてゆく。



捕鯨、茶道、もてなしのこころ、海女、もののあわれ...日本へのインスピレーションの源であるその知識に着眼の非凡さに舌を巻く。音楽はパートナーであるビョークが担当。神秘的でかつ人工的な歌声が臨場感をあおる。


巨大な建造物の阻み、物体の屹立、拘束、崩壊、溶解、変容、仕切られた世界、柔らかさ。小さく仕切られた茶室、限定された道具、研ぎ澄まされた切断の作法により男女の欲望行為をより人工的に、液体が凝固し変容し、亀裂し、溶解してゆく物質的力学にたゆたう官能を注ぎ込んだ美しい映像作品。身体を構成するあらゆる器官、自然物、人工物へのリアルな欲望が掻き立てられる研ぎ澄まされたイメージ。


ちなみにイザナギ・イザナミの子供、蛭子は三年たっても足が立たなかったため海へ流されたという。その蛭子が恵比寿神となって海の底にあるという神の国「常世」から富や時には災いを持って地上に時折おとずれるという。鯨の胎児はその恵比寿神と考えられていたのか、胎児が流れ着くと誰にも言わず箱につめて海へ送り返す儀式をしたという。この作品は捕鯨という一つの日本文化を描くことで、「神」や「常世」「もてなし」「贈り物」「死」などの深遠なテーマも内在しているものと思われる。

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