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アレクサンドロ・ソクーロフ監督「太陽」

―1945年8月。その時、彼は庭師のような質素な身なりをしていた。その人の名前は、昭和天皇ヒロヒト。宮殿はすでに焼け落ち、天皇は、地下の退避壕か、唯一被災を免れた生物研究所で暮らしていた。彼を神の子孫だという侍従たちに天皇は、「私の体は君たちと変わらない」と笑った。―(チラシ宣伝文より)


終戦間際のヒロヒト天皇は、皇后、皇太子を避難させ、海洋生物の研究などをしながら日々の公務をこなす。場面は天皇が食事をとるシーンから始まる。菊の天皇家の紋章が美しい食器類。天皇の西洋式の食事を給仕する侍従ら。天皇は今日の予定について侍従に確認をする。墨を筆に染み込ませ一字づつ丁寧に手紙を書く天皇。最後に残る日本人は私だけなのではないか」とぼんやり尋ねる天皇に対して言葉に窮し、天照大神の子孫にして現人神にあらせられれば・・・と苦しそうに答える侍従。御前会議のため、軍服に着替える天皇。御前会議で陸軍司令官は拝謁に興奮しながら、本土決戦の覚悟を申し述べる。明治天皇の歌を引き合いに出して平和を望む考えを述べる天皇。天皇自身の静かな葛藤が映画を通じて感じられる。
そうして日本は終戦を迎え、ヒロヒトは一人ダグラス・マッカーサーとの会見に臨む。マッカーサーと通訳を介さず英語で会見、他に数ヶ国語を操れることを説明するなど謙虚で物静かで聡明な姿が描かれている。葉巻に興味を示し、食事を美味しいと言って食べる親しみのあるヒロヒト天皇の姿にマッカーサーの心が動かされてゆく様子が丹念に描かれている。他ヒロヒトの写真が記者によって撮られる際、「チャップリン」に似ていると野次が飛ぶシーンや侍従の一人が人間宣言のあと自害に至るなどの印象的なサブストーリーがある。


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口中の匂いを手の平に吐いて「臭い」と呟く、年老いた人のように口をぱくぱくさせる等が随所にあり、神でない天皇の人間味を表現した箇所が親近感を越えてリアルであり、日本での公開不可能と言われた理由について頷ける。
レーニン、ヒトラーなどを描いた歴史映画の巨匠とのことだが、東京の空襲跡が全て鉄筋の廃墟に感じられる、米から送られてきたチョコレートの詰まったダンボールを天皇の近くで開いて騒ぐなど事実考証に疑問、違和感が随所ある。ロシアの映画監督らしく、全体の色彩は薄暗く、深みを帯び、静謐である、。映像美を謳われていたいたが、確かにセピアや薄いブルーなど、ファンタジーカラー的な濃淡が美しいシーンがある。マッカーサーをはじめとする米軍もなぜか露西亜らしい深みを称えた人柄として表現されており、外国から見た日本というより、露西亜から見た日本。どちらかというとソクーロフ監督自身のフィルターを通して見たファンタジー要素が濃い。



イッセー尾形の演技が秀逸。些細な仕草、言葉の癖の端々に昭和天皇にリアルな人間味を浮かび上がらせている。ちなみに本来の昭和天皇に似せた演技で誇張なく自然に似せていると評価が高い。彼の舞台を生で見たときも人物描写の圧倒的な技術力に驚いたが今回もそれが遺憾なく発揮されている。桃井かおりはかなり宣伝されているものの出番は最後の数分のみ、存在感のある女優である。侍従役の佐野史郎の安定した高い演技力が映画に一定の信頼感を与えていた。日本の俳優陣営のレベルの高さを賞賛したい。


http://www.taiyo-movie.com/

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