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ベニスに死す

トマース・マンの文体は美を昇華させ神へと至らしめる。その驚愕、慄き、美の光の粒子を、一粒一粒、一筋一筋をあますことなく精緻な文体で表現する。主人公、アッシェンバッハはドイツを代表する文学者であり、快楽への堕落といった安易な傾向と決別し、全身を投げ打って、長い辛苦と鍛錬のうちに文体における芸術を追及することに費やしている。アッシェンバッハがこの小説を通じて問いかける「美とは、芸術とは何か?」というあまりにも高められた精神性を持つ問いかけが、少年に具体性を持ち備わった無垢の「美」という神のごとき超越体に脆く挫かれてしまう。その脆弱さ、その憔悴、それは彼が芸術に捧げていた辛苦が崇高

であり深くあればあるほど、そのたおやかさがすざまじい苦悩の表現となる。


文学者アッシェンバッハは作者トーマス・マンの人生を投影し、その問いかけ、その文体は傾向や、感覚、虚無への逃避といった安易な結論を許さない強靭な意思そのものである。文体を用いて、文学の成しうる限り、人類の英知を終結させて挑んだ美への圧倒的な奉仕と、それに対する無垢な美の圧倒性が天空の広がりと地上の黒点ほどの対比をなし、狂おしさを呼ぶ。


孤独と忍耐のうちに文学という芸術に挑む初老の著名な文学家、アッシェンバッハはふとした気の緩みからベニスへの旅を思い立つ。そこで出会ったオーストリアの完全な美を具現化したような少年タッジオに魂を奪われる。ベニスではシロッコが吹き、疫病が蔓延しはじめるが、それと知りながらアッシェンバッハはタッジオのためにそこを立ち去ることが出来ない。煩悶と憔悴を繰り広げ、一言の声も交わせないままに、アッシェンバッハは打ちひしがれ疫病に体を蝕まれ、息絶えてゆく。

トーマス・マン? ベニスに死す

                  ベニスに死す
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ちなみにヴィスコンティ監督がこの作品を映画化しており、むしろこちらの方が有名である。映画では文学者は音楽家という設定になっており、文学に見られる思考の深さは薄められているが、さすが巨匠ヴィスコンティ生涯の愛読書であり、生涯の大作というだけあって、台詞を極力排除し、マーラーの音楽が全編に配し、退廃と妖艶を画面全体に芳し出すことに成功した素晴らしい作品になっている。


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