60年後半、人間が始めて月に降り立ち、メッツが躍進を遂げるアメリカNYを舞台とする。唯一の理解者であったクラリネット奏者ビクター叔父を失ったフォッグ(マーコ)はその強烈な喪失に耐えるために、自らを酷使しはじめた。ビクターの残した蔵書千冊あまりの詰まったダンボールから片端から一冊一冊とりあげ読みふける。仕送りもない生活でアルバイトもせず、彼は飢餓の一歩直前まで本を読み、そして読んだ本を売って生きた。本は読み終わり、跡に何も残さず、アパートを追い出され、セントラルパークで寝泊りし、死の間際まで行く。友人と中国人であるキティという女の子と助けられ九死に一生を得る。その後、フォッグは車椅子に乗ったエフィングという一風変わった盲目の男のもとで朗読をするという仕事をすることになる。エフィングが死期を予感した時、彼は自分の不思議な経験、以前彼は将来を嘱望された画家であったこと、フロンティア時代に大陸を横断するたびををしたこと、半身不随になった過程、それらを一つの著書にする仕事をフォッグに与える。そして最後にフォッグを呼んで、自分の遺産を息子に渡してほしいと頼む。彼はエフィングの息子である、バーバーに会いに行き、彼と接するその過程の中で、実はその息子はフォッグの父親であったのだという、親子三代に渡る自らの不思議なルーツを見出す・・・。彼は途方にくれながらユタからカルフォルニアまでの旅をし、カルフォルニアの海岸に立ち竦み空に浮かぶ黄色い月を見る。
青春はあまりにも無為な徒労に還元されるものでしかないこと、それは無謀な酷使を強いられ、消耗的であるもの。不器用で、誰かを傷つける種類のもの。孤独、喜びと、苦しみと、憤りと、そんな感情の膨大な消費場所、あちこちに頭をぶつけてよろめきながら、それでもナイーブな心に希求だけが月のごとく輝く。
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太陽は過去であり、地球は現在であり、月は未来である
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