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チェックポイント黒点島 燐光群


1213日(水)~19日(火)精華小劇場

公式サイト↓

http://www.alles.or.jp/~rinkogun/



日本の代表的な作・演出家が関西にやってくるということ、竹下景子、渡辺美佐子といった有名な女優が出演しているということも、注目しており、ベテラン俳優陣営とレベルの高いスタッフワークも素晴らしかった。会場には普段よりも高年齢層の観客が目立ち、ほぼ満席状態で、高い年齢層にも質の高い演劇を好むファンの人人が埋もれていることを知った。

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氏はパンフレットで「どこか別の世界にもう一人の自分がいて、全く違う人生を生きているという想像力がある。」と述べている。また村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を例にとり、「似た発想によって成り立っている。小説の舞台になっている二つの世界を擁した街は、明らかに二十年以上前のベルリンがモデルになっている。私もかねてから「ベルリンの壁」に関わる芝居を作ろうと思っていた。」とも書いている。

そうして最後に「五年前、ニューヨーク貿易センタービルの出来事以来、世界は空にも境界線を強く意識するようになった。空港でのチェックの厳しさは、たんに危機を想像させるということ以上に、私たちにむなしさとさみしさを味あわさせる。現実に圧されることなく、チェックポイントというものを、ネガティブでないイメージで捉えることは出来ないだろうかと考えている」という言葉で結んでいた。作品は難解だが、このパンフレットの言葉で凡その概要はつかむことが出来るという印象だ。

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話は非常に複雑でまた解決のなされない部分が多い。ある日、対馬沖の海上に新しい島が浮かび上がる。それを最初に発見した科学者夫婦は島に小屋を立て、太陽の黒点観測所として活用する。長崎の「対馬」。日、台、中がそれぞれに領土を主張する「尖閣諸島」。日本と韓国の間に領土問題が存在する「竹島」などの領土問題を中心に、各国間に存在する様々な領土問題やベルリンの壁などを絡ませながら、ヒロコという三人の女性とその家族の間に横たわる複雑な問題も並行に表現し、世田谷殺人事件を彷彿させる事件を描くなど個々人の精神的領土の問題も扱っている。独立した場所として存在する黒点島がそれらの個人的、社会的問題に対して、対峙する部分として描かれているだけに、問題の数だけ、その対峙体である黒点島も様々な意味の層を用意せざる得なくなってしまい、理解に難かった。非常に情報過多で、特に社会問題に意識的ではない私自身の状況もあってか、処理速度は当然間に合わず、未解決の情報が蓄積され続け、混沌の印象のもとに公演が終わったという感じだった。それが現在の情報過多で理解速度すら及ばない問題が集積する社会であるのだといった印象を作者が意図していたのだとしたら、敢えてこの形をとったものかもしれないとも思われる。ラストは「どこでもない場所から独立した場所として」呼びかけがなされ、理想像とも何ともいえない、あらゆる主張を拒むような曖昧な形で終わる。

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坂手洋ニは、社会問題を扱う国内では稀有な優れた劇作家であり、岸田戯曲賞をはじめとする各賞を総なめにしている。戯曲では何度か目を通したことがあり、戯曲として触れても難解であるのに、舞台化することに何か意味があるのかと感じていた。つまり社会的な訴えや意見をより明確に実現していくためには舞台ではなく、主張として紙面を作ることや、実際的な署名など、もしくは政治活動の方が理にかなっていると感じていたためだ。だからこれほど明確に問題意識のある社会劇というのが昨今、稀なのはそうためではないかと私は感じていた。今回、始めて見て舞台でなくてはならない必然性を感じた。実際に演出された作品を見て、社会の問題を、あえて奇妙な言葉を使わせてもらうとしたら、「匂い」として処理したいのだと感じた。曖昧で処理出来ぬ部分を抱えていることが重要であり、それが肉体や呼吸を介在した舞台作品として提供することでより氏の感じている感覚に近くなっているのだという気がした。そうして最終的な方向付けは結局、論理に導かれ結論による処理ではなく、感覚や直感による観客の感性に、または作家を含む、俳優や劇場空間を含めた大きな運動体がこの作品を表現していく過程を通じて自然に生み出される方向付けに委ねられているのだと感じた。




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