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ボリス ヴィアン うたかたの日々(日々の泡)

39歳で夭折したボリス・ヴィヴァンのこの著書は彼の生前は殆ど評価されなかった。哲学・ジャズ・絵画・ファッション・料理など様々なパーツを組み合わせながら、イマジネーションとセンス漂う唯一性の高いこの奇妙な絵画小説は、彼の死後、コクトーやサルトルの評価により注目を浴びることになった。

ボリス ヴィアン, Boris Vian, 伊東 守男
うたかたの日々

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(STORY)

コランの恋人クロエは胸に睡蓮の花が咲くという病気にかかる。クロエの治療のためには高価な花の匂いを嗅ぐ必要があった。憔悴していくクロエを見つめながら、豊かな生活を失い慣れない労働にやつれていく無垢なコランと二人の愛がひたすら切ない。並行してすすむパルトルの著書に夢中になって恋人を忘れていくシックとそれをじっと見つめていることしか出来ないアリーズとの胸苦しい恋も痛ましさを掻き立てる。

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「うたかたの泡」の唯一性の世界とは・・・

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???? 鮮やかな色彩感覚と繊細なファッションセンス

 白のスカートと黄色のセーター、鮮緑色の絹スカーフ、アーモンドグリーンのウール・・・

(フランスの雑貨やトリコロール、アメリなどを連想させる繊細なファッションの表現)

―セロファンのブラジャー、小さな純白のパンティーと靴下のほかに、彼女は二枚がさねのモスリンを纏い、ゆったりとしたツル折のヴェールを肩からすべらし、顔はすっかり包み込んでいないのであった

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???? 心理を表す独特の動的景色、リズミカルでナイーブ、時に激しい心理に幾何学的な無表情さを与える

車が心臓曲線を描いて停まる、噴射推進式の蛙の実験台、迅速な側面運動によって移動する等・・・

―力のかぎり彼は走っていた。すると、彼の目に入る人々が、のろのろと前かがみになり、大きなボール紙の箱を落としたような響きのない音を立てて、舗装道路に将棋だおしに倒れていくみたいだった。

コランは走りに走った。家と家とのあいだにせばめられた地平線の鋭角が自分の方に突進してくるのだ。足もとは、夜になっていた。形の定まらな無機質のような黒い線の夜で、空は色調のない、もっと鋭角の天井だった。そのピラミッドの頂点目ざして彼は駆けていた。地域ごとに少しずつ暗さがすくなくなってくることが心のささえだったが、彼の街までは三つの街があった。

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???? イマジネーションを刺激する新語

カクテル・ピアノ、心臓鋏、など現実にはないパーツが多々でてくる。ジャンポール・サルトルはジャン・ソール・パルトルに捩っているという現実から少しぶらした表現もユニーク。

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???? 残酷さと滑稽さ

スケートリンクで団子状に絡まって死ぬ人々、貧民街の痛ましさ、失われていくお金、主人公にとっては滑稽な出来事が次々起こるが、読者から見ればその意味するところは非常に残酷である。冒頭に「かわいい女の子とデューク・エリントンの音楽以外はどうでもいい」とあるがその言葉そのものがこの世界のアイロニーを代表している。

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???? メランコリー

ストーリーは胸が締め付けられる哀しみで溢れている。彼ら、彼女らは愚直で、生真面目で、愛すべき人物達である。彼らは苦しみながら恋をし、夢中で獲得し、夢中で喪失する、陥る無気力すらも全力を賭けた命がけの無気力であって、彼らの中には青春の必死さが投げ打つあがきある。その無為の必死さは読者の涙や愛を獲得するに相応しいものである。

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浮遊する現実感

現実感のなさと共感(現実とのリンク)とが交じり合って、この本は一つの世界観の完成を見ている

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―彼女は本屋の傍らに寄ってハンカチを落とした。本屋はそれを拾おうとしてめきりという音を立てて、背をかがめた。その背中にアリーズは素早い動作で心臓鋏を突き立てた。彼女はなにだを流し、震えていた。男は顔を床につけて倒れた。彼女はハンカチを拾い上げようとしなかった。ハンカチを男の指が締め付けていただの。心臓鋏をひきぬくと、ひどく小さくて淡紅色の本屋の心臓が、二本のつかみ柄にはさまれて出てきた。つかみ柄をひらくと心臓は本屋の近くにころがった。急がねばならないのだ。




ボリス ヴィアン, Boris Vian, 曽根 元吉
日々の泡


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