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如月小春「ロミオとフリージアのある食卓」

何かの本で如月のことを普通の天才と書いていたがまさしく言いえて妙。同時期に活躍したアングラ演劇、岸田、唐、寺山などが持つ故郷の「原風景」に対して如月小春のそれは「都市」のイメージを醸す・・・どこにも依拠しない、何もない、掴みどころのないからっぽの風景・・・けれども如月戯曲の優れたところはその虚無やノイズを主体的に捉えていることだ、「遊んでいる」といった方がしっくりくる。

しばしば都会的とされる空虚さは個へと返り閉鎖してゆくものだが、如月はその感覚を遊び、楽しみ、そして社会とコミットすることを求めてくる。戯曲は生き生きと呼吸し、やけっぱちで、さりとて倒れこまない現代人の強さがある。如月小春本人は非常に礼儀正しく、挨拶をかかさない、物事にきちんと向き合うタイプの女性だったという。まさしく、同世代の演劇の枠から離れた普通の天才の登場だったのだ。如月は当時としていちはやく、演劇に映像表現や音楽とのコラボレーションを取り入れた。作劇法も台本を基調としたものから、俳優のワークショップ、エチュードから舞台を作るなど演出上でも前衛的な人物だったようだ。

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如月 小春
如月小春精選戯曲集

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中野区民の生活に創造性と非日常性を持たせるためがロミオとジュリエットの舞台を作る計画をしている。俳優が選出され、残るロミオ役に何も知らない三越の配達員バイトが抜擢され、配達バイト中に幽閉されロミオを強要される

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葉里巣の求婚シーン

葉里巣 樹里絵津徒、では何が不足なのだ。私はそなたのためなら何でもしよう。指輪も買おう、浮気もしよう、火災保険なんかにはいるのもいいな。そうだ、子供ができたら親子三人、日曜日には奥多摩あたりまでドライブにいかないか。人気のない岩かげにカローラ止めて排気口から送り込まれる甘酸っぱい死の匂いを嗅ぐなんてのも洒落てるぜ。そうさ、二人でやれば他のどの夫婦にも勝りも劣りもしないりっぱな倦怠期を迎えられるに違いない。樹里絵津徒、何故なら私はそなたをこころから愛してる、などと眉一つ動かさずに言える男だからさ。

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葉里巣 ま、とにかく現代のしかも中野区なんですから、生活の端々に退廃のぞかせて、気分は暗め、暗めに、しかしあまり物事は深く考えずに優柔不断さえ失わなければバッチシですよ。都市生活者のリアリティなんて所詮その程度なんじゃないですか。僕なんか「苦悩」これだけですよ、これだけ。気負わずに日常の風景をキラッと光る鋭いかたちに切り出す。


ただ、スーパーに行ったり、仕事に行き、バイトをする暮らしの中にある残酷や空白や地獄や落とし穴・・・そんなものを見せてくれる愛する女性作家、はやくに亡くなられたのが残念。





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