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死者の奢り 大江健三郎

死者の奢りという作品は腐臭がする。腐ったものの柔らかく反発する表皮の触感がする。そうして目だけがぎょろぎょろと浮き出て露骨な反抗を述べている。その疲労感、腐敗感は疲れすぎた世界を生きる、我々の鈍い共感を呼び覚ます。


僕と女子学生は解剖死体を処理するアルバイトをするため医学部の地下へもぐる。そうして管理人と三人で、濃褐色の水槽から新たなアルコール溶液を満たされた水槽へ運搬車で死体を運び移す作業をしている。管理人と女子高生がいなくなると兵隊の死体が僕に何事かを語りかけてくるようだ。休憩中、女子高生が話しかけてきて自分が妊娠しており、堕胎のためのお金を得るためにバイトをしたのだと告げる。彼女は疲労の匂いがする。


大江健三郎 言わずとしれた文学者では日本2人目、川端につぐノーベル文学賞作家。授賞式での記念公演「あいまいな日本の私」は有名。三島がノーベル賞を逃したとき、次の受賞は大江健三郎だと言ったらしい。ソンタグとも親交があり政治的発言も行っている。東京大学仏文学科卒。在学中に小説家デビュー


―死者たちは、濃褐色の液に浸って、腕を絡めあい、頭を押しつけあって、ぎっしり浮かび、また半ば沈みかかっている。彼らは淡い褐色の柔軟な皮膚に包まれて、堅固な、馴染みにくい独立感を持ち、おのおの自分の内部に向って凝縮しながら、しかし執拗にからだをすりつけあっている。彼らのからだの殆ど認めることができないほどかすかに浮腫を持ち、それが彼らの瞼を硬く閉じた顔を豊にしている。揮発性の臭気が激しく立ちのぼり、閉ざされた部屋の空気を濃密にする。あらゆる音の響きは、粘りつく空気にまといつかれて、重おもしくなり、量感に満ちる。


大江 健三郎
死者の奢り・飼育



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