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映画「赤い靴」

今回映像撮影をしていただいた江嶋氏と映画談義をしようということになり、映画を見に行った。前回紹介したダヤン監督の新作「エディット・ピアフ」だ。「クリムゾン・リバー2」がセンスが見えたので期待大で見に行ったのだけど、映画にしてはドキュメンタリーすぎて、ドキュメンタリーにしては映画すぎて、何を見るやら焦点がぼやけてしまっていた。素材的にヒットすることは確実だし、ダヤン監督に気負いがあってて色々やってしまったのかな。2作しか見ていないけれど、ゆっくりした壮大な演出よりも、切れ味があってパンクな匂いのするものの方が得手のようだ。残念ながら映画は思ったほどではなかったのだけれど、ピアフを演じた女優マリオン・コティヤールの力量には感じ入った。ピアフの若い頃から47歳の死にいたる20数年を全部彼女が演じている。若い頃の下町育ちのガサツで擦れて、溌剌とした勢いあるピアフから死に至る直前は、薬とアルコールに侵され、病をわずらい殆ど老人のように退廃しているピアフまで。日本にこれだけの演技が出来る若手女優さんがいるのかしら、やれるとしたら誰かな・・・


江嶋氏とは結局映画が長すぎて談義できず。彼はなんでも「特撮オタク」でアングラ好みらしく、そのアングラ好きの「特撮オタク」を自負する彼に、好みの詳細と、野望やら、ついでに麻生太郎は好きか、村上隆を評価するかといったところまで聞きたかったのに!無念・・・・それは、またの機会。


で、今日書くのは全く関係なく、「赤い靴」について、野口雨情じゃなくて、アンデルセンの「赤い靴」・・・を題材にした映画について。私の本棚にはいわさきちひろ画の絵本「絵のない絵本」がある。おつきさまが貧しい青年に、夜な夜な見る世界の物語を聞かせてくれるきれいな散文詩集。


ハンス・クリスチャン・アンデルセン。デンマークの貧しい家に生まれ、俳優を志し、オペラやバレエ学校に入るも挫折、劇作家になりたかったが認められず、会話もうまくなくて、容姿に恵まれず失恋続き、夢見がちで、挫折続きの貧しい青年だった。アンデルセン童話には人の夢と書くところの儚さがある。清少納言の「なにも、なにも、ちいさきものはいとうつくし」みたいなちいさなものに対する喜びがある。マッチの火を何本も擦りつづけ夢を見ながら死んでいった少女、鏡の破片が目に突き刺さってしまったカイ、海の泡になった白雪姫、病に伏した王のために歌を歌った小夜啼鳥(ナイチンゲール)それは不器用だったが、夢を忘れなかった彼のこころのかなしさやうつくしさが映っている。そんなアンデルセンの書いた話の中でもとりわけて美しい「赤い靴」のこと。


映画「赤い靴」は1948年の映画ながら、バレエ映画の最高峰とも言われる作品だ。当時のトップダンサーを集めた映画で、15分に渡る劇中バレエ「赤い靴」が素晴らしい。ロシアバレエ団(バレエ・リュス)を彷彿させるバレエ団を舞台にして、ディアギレフを思わすプロデューサー、レルモントフ。ニジンスキーになぞえられたプリマ、ヴィッキィが登場する。レルモントフに見出されたヴィッキィは、同時期に見出された音楽家ジュリアンと恋に落ちる。二人は「赤い靴」で共に世界的な名声を博するが、その後、プリマの恋を許さなかったレルモントフにより二人は追放される。しかし、レルモントフはその後、ヴィッキィの素晴らしい踊りが忘れられず苦悩する。ついにレルモントフはヴィッキィを連れ戻す。彼女を連れ戻しに来た夫ジュリアンと、世界でたった一人自分を育て上げてくれたプロデューサーレルモントフの間で苦しみ引き裂かれるヴィッキィ。彼女の足は踊り続けなければいけないという「赤い靴」を履いているのだ。


ニジンスキーが去ったあと、バレエ・リュスをついだ俳優レオニード・マシーンが自ら振り付けした踊りも見ることが出来て見ごたえがある。15分に及ぶ「赤い靴」も素晴らしいが、その他のシーンもなかなかいい。レルモントフを演じたのはアントン・ウォルブルクという俳優らしいが、彼のシーンで一等好きな一場面がある。去ったヴィッキィに駅で再開する場面だ。


駅でレルモントフは去っていったダンサー、ヴィッキィを待っている。仕立てのよい黒いコートに白い帽子をかぶり、ステッキと手袋を持っている。颯爽と歩き、ヴィッキィのいる車両を訪れる。背筋を真っ直ぐ伸ばして、挨拶をし、「座っても?」と許可を求める、少し気だるげに壁に凭れると優雅に帽子と手袋を椅子にほおリ投げる。それから背筋を正して、話しかけながらゆっくりと両手をあげると、すっとサングラスを外し、胸ポケットけかける。優しいジェスチャーで会話をすすめ、ポケットから金色のシガレットケースを出すと煙草を一本摘まんで、ケース軽く4度叩き、唇の端に咥える。少し追い詰めるようにおどすように話を進めて、そのあとヴィッキィの傍らに腰掛けるとステッキを軽くまわしながら、優しく諭すように戻ることを勧める。洗練の演技で、ワイルド、ボドレール、サティなんかの優雅な時代を彷彿、ロシア・バレエ団が牽引した世紀末ダンディズムを再現していた。トレビアン。



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